改めて問う　プルサーマルは必要か？

関西電力高浜３号炉で2010年12月25日から国内4例目のプルサーマルが実施に移されました。燃料集合体全数157体のうち８体が問題のプルトニウム混合燃料（MOX燃料）です。

関電の高浜原発では、1999年にMOX燃料が運び込まれ、今にもプルサーマルが始まるというところまでいきました。ところが、差止め裁判を起こして、燃料製造時のデータのねつ造を追及した市民の力で中止に追い込むことができました。データがねつ造された燃料は、使うことなく返送されました。

ところが、六ヶ所再処理工場の営業運転の予定が近づいてきたため、再処理で取り出すプルトニウムの使い道を示す必要が生じました。2009年6月、電気事業連合会は「2015年までにプルサーマルを16〜18基で実施」と公表し、目標年を5年後にずらしたものの、実施に本腰を入れてきました。

すでに九州電力玄海原発で2009年11月に初めて16体のMOX燃料が装荷され、四国電力伊方原発でも2010年3月からプルサーマルが実施されてしまいました。あろうことか、東京電力福島第1原発でも、ひび割れ隠しの発覚でプルサーマル実施の地元同意が白紙撤回されていたにもかかわらず白紙撤回自体が撤回され、1999年に運び込まれた古いMOX燃料で2010年９月に実施されるという事態に陥っています。

プルサーマルの危険性

ウラン用に設計された原子炉に当初予定していなかったプルトニウムを入れれば当然問題が生じます。「灯油ストーブにガソリンを入れると火事になるようなもの」との比喩はすぐに事故が起こるようで大げさかもしれませんが、確実に安全余裕は減ります。

まず、ウランとプルトニウムは燃え方が違うため、出力が局所的に上昇し、核反応が不安定になるといった問題が生じます。このため、今回関電は新たに高浜に運び込んでいる12体のMOX燃料のうち８体を使い、炉心中央から対称位置に配置するとしています。

また、プルトニウムが中性子を吸収しやすいため周囲の中性子が減っており、いざという時に制御棒を挿入したとしても、中性子を吸収して核分裂を停止させるために今までよりも時間がかかり原子炉をうまく止められない可能性があります。これに対しても関電は核分裂を抑えるほう素の冷却水中の濃度を変更して対応するとしています。無理やりやっかいなものを炉内に入れていると思いませんか？

さらに、MOX燃料は、従来のウラン燃料に比べて放射性ガスが発生しやすく、燃料棒の内圧が高くなって燃料が壊れやすく、炉心の溶融事故が起こりやすくなります。

炉内に毒性の強いプルトニウムがたくさん入るので、もしも大事故がおきて放射能が放出されるようなことになれば、事故の被害は格段に大きくなります。10年前、アメリカ核管理研究所科学部長のエドウィン・S・ライマン博士は、高浜原発で重大事故が起こった場合をコンピュータで計算し、ウランだけの炉心の場合と比べ1/4のMOX燃料が入れられている場合は、潜在的ガン死が8630人から70,700人に増大すると警告していました。　

運び出し先のない使用済みMOX燃料使用済み燃料の発熱量

しかもMOX燃料は発熱量が大きいため、原子炉から取り出し10年後のウラン燃料並みに冷えるためには約100年もかかるとの指摘もあります。電力会社は、原子炉での燃焼時間をウラン燃料よりも短くし、ウラン燃料と同程度の発熱量に抑えると説明しています。

仮に冷却に問題がないとしても組成が違うため、六ヶ所再処理工場での処理はできません。六ヶ所再処理工場に続く第２再処理工場で処理をするなどと説明されますが、第２再処理工場を建設するかどうかをこれから検討することになっていて、めどはまったく立っていません。結局、原発の使用済み燃料プールに永久に保管するしか方法がないのです。

プルサーマル計画の経済性

こんなにやっかいなプルサーマル計画を、関電だって本音ではやりたくないのではないでしょうか？ 核燃料の製造費も当然、MOX燃料は高くつきます。電力会社から価格は公表されませんが、特殊な輸入品なので貿易統計から価格を推定することができます。
燃料 輸入年月 対象炉 １体の価格
ウラン 1999.6 高浜３ 1億円
MOX 1999.10 高浜４ 5.4億円
2010.6 高浜３,４ 8.8億円
電力会社は発電コストへの影響はないと 言っていますが、高い買い物であることは間違いありません。

しかも、青森県六ヶ所村にMOX燃料工場をこれから建設して国内で製造することが目指されています。再処理を含めたMOX製造コストは、トン当たり約２５億円になると国の委員会の資料では示されています。単位が上の表と違うので単純比較できませんが、今回の輸入分の倍近い値段に相当します。それでも電気代は高くならずにすむのでしょうか？
プルサーマルも一刻も早く止めてしまうべきです。

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