森田町長と前町長は、原氏に高レベル処分場等の誘致の権限を委任する書面に公印を押して渡していたのです。このような事態に南大隅町議会は2012年12月、「放射性物質等受入拒否及び原子力関連施設の立地拒否に関する条例」を可決するに至りました。指宿の南に位置する山川港から南大隅町役場のある根占にフェリーで渡りました。鹿児島県護憲平和フォーラムの方が段取りしてくれて、大隅ブロック平和運動センターの議長さんが案内してくれるとは聞いていたのですが、港にはなんと6人の方が出迎えてくれました。さらに町役場の駐車場で「南大隅を愛する会」代表の大坪満寿子さんご夫妻とも合流して、候補地に狙われた佐多辺塚へ向かいました。
辺塚集落は95世帯、140人くらいだそうで、根占から車で1時間くらい、まさに陸の孤島です。 大隅半島の背中にあたる山の部分から海に向かって降りていく道の途中で車が停まり、ここから見える一帯が候補地だと教えてもらいました。土木会社社長が買収済みで、残りは国有林だとか。
高レベルの処分場の場合、地上施設はそんなに土地を必要としないので、除染廃棄物に狙われた土地ということでしょうか。昨年10月中旬にも町民が交通費と宿泊代をNUMOが負担していると言われる六ヶ所ツアーに連れ出されたことが明らかになっており、推進派の動きは続いています。目の前に、かつて核廃棄物貯蔵の話があり、米軍の離着陸訓練施設として全島を国が買い取る計画のある馬毛島があることにも驚きました。
辺塚集落は、沖縄・辺野古の埋立用岩ズリの採取地としても狙われています。防衛省の申請書では大隅半島佐多岬地区から70万m3の岩ズリを購入することになっていて、1月24日には採石業者が町内で住民説明会を開いたりしています。集落のはずれにある自衛隊の射撃場を抜けると、かつて採石場だった場所があり、大きく切り出され、搬出されないままになった花崗岩の塊がいくつもある場所がありました。
地主さんが裁判をして企業の砕石権を取り消させたそうで、現在、辺塚集落を含む佐多地区で採石法に基づいて認可を受けた採石地はないそうです。辺野古の岩ズリの採取地としては、佐多岬地区、沖縄本島の他に、徳之島、奄美大島、五島列島、天草、門司に瀬戸内が購入予定地
とされており、これら地域を結んで「辺野古土砂搬出反対全国連絡協議会」が結成されて取組みが行われています。
辺塚では、公民館長のお家にお邪魔して、処分場に狙われている広葉樹林の自然がいかに素晴らしいか写真を見せてもらい、お話を伺いました。人が分け入らない所に素晴らしい滝があったり、貴重な植物があったり。盗掘されないように保護しながら、その素晴らしい自然をアピールするにはどうしたらいいか、悩みどころです。 私は求められたので、高レベルガラス固化体には不良品が多く、ガラスに固められていない放射能が漏れだすこと、一緒に埋められるTRU廃棄物は天然バリアに吸着せず、10年で地上に漏れだすことを説明しました。みなさん、初めて聞いたとびっくりされていました。核のごみキャンペーン関西で制作しているスライドショーを、CDでプレゼントしてきました。
大坪さんたちは、看板を立てたりして高レベルの反対運動をしていますが、町長は「条例がある。その話は終わった」と取り合わないそうです。逆に「放射能関連施設は絶対いらない！ きれいな南大隅を守ろう！」としか書かれていない看板を「名誉棄損で告発に値する」と町政懇談会で述べて恫喝し、その影響で「南大隅を愛する会」の会員さんからしばらく活動を休止すると連絡が入ったとお聞きしました。
核処分場の誘致をフィクサーに委任し、その相手からモーターボートを無償で譲り受けるなど、やりたい放題の町長が、その椅子に座り続けられるのも町議会に反対の声を上げる議員が一人もいないから。委任状が問題になったときも、真相究明のための百条委員会の設置すらできませんでした。
今春、政府は高レベル処分場に適する地域を地図で3段階に色分けして示す予定です。陸地は海岸から20キロ、海底は海岸から15キロの範囲が対象になる予定で、花崗岩地帯の南大隅はおそらく「より適性の高い地域」とされることでしょう。その時、条例が廃止されることだって想定しておかなければなりません。そうならないように大坪さんは、この4月にある町議選(定数12)に立候補する意思を固めて、準備を始めています。